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Eric Haze

Eric Haze

手描きのアートに込められた
ストリートのクラフツマンシップ


 

クラフツマンシップあるシューズを
ストリートのアートでモダンに

 
エリック・ヘイズが、小木“POGGY”基史がキュレーションするジミーチュウとのコラボレーションに参加していると耳にした。クラフツマンシップあるハイブランドのシューズを、ストリートのレジェンドはどんな形で現代流に仕上げるのか。これはまさに“モダン”と“クラフツマンシップ”を兼ね備えたプロダクトなのではないだろうか。そして手描きのグラフィティやアート作品にこだわってきた彼にとってのクラフツマンシップとは。そんな思いを胸に、彼に話を聞いた。
 
「POGGYは一緒に仕事をする前に日本にいる友達を通して出会っていたんです。今回のプロジェクトは、私のデザインスタジオのパートナーがジミーチュウのクリエイティブディレクターのサンドラと仲が良かったことから生まれたのですが、みんながこのアイディアに興奮してくれたことを覚えています。サンドラは最初から私の作品とジミーチュウのプロダクトをどのように融合させたいかはっきりしていました」。
 
プロジェクトのはじまりをこのように話すヘイズ。ジミー チュウについては「高品質のラグジュアリーブランド」と認識していたという彼だが、今回のコラボレーションは驚きの連続だったという。
 
「これまで様々なコラボレーションを行ってきましたが、型を破ろうとしないパートナーがほとんどでした。でも今回は型を破る事が大前提で、逆に『チャレンジして』と言われていた気がします。彼らはこれまでにないものを作ろうとしていた。だから今回は特別に私のアイコン的なデザインであるクラシックスターも自由に使用してもらうことに決めたんです。私のアートワークを尊重してくれていたし、ものづくりに真摯に丁寧に取り組むサンドラと彼女のチームを信頼していたので。結果的にあのアイコンはパンプスのヒールやハンドバッグに宝石のように取り付けられたり、スニーカーのシューホールとして使用されたり、想像を超えたものが出来上がりました」。
 
言葉通り、ヘイズのシグニチャーのクラシックスターが大胆にデザインされたアイテム群は、両者の世界観が存分に感じられる仕上がり。シューズはもちろんバッグ、スニーカーまで豊富なラインナップに加え、ビーズからレザーまでを使用した幅広い素材も特徴だ。
 
「一つのアート作品をどれだけ多くの方法で、どれだけ多くの素材を使って表現できるかを突き詰めました。素材を変えるだけでこんなにも雰囲気が変わるなんて、本当に奇跡的。プリント、ビーズ…たくさんの種類があってすべて思い出せません(笑)。すべてが高品質で仕上がったこのコレクションのクラフツマンシップは私の誇りです。それはもちろんジミーチュウによる生産と品質のレベル、そして細かいディテールへの気遣いのおかげ。何も言わなくてもこの完成度の高さがストーリーを語っていますよね」。
 
また、スニーカー、カードケースにはレッド、ブルーのカラーが取り入れられているのも本コレクションならでは。彼の代名詞である白、黒、グレーを基調にし、これまでの彼のレガシーに忠実でありながら、遊び心と実験精神を感じさせたアイテムは、ヘイズのアートをモダンに進化させたものと呼べるだろう。
 
「2、3色使用したプロトタイプもありましたが、私のモットーが“less is more”なので、POGGYとクリエイティブチームのみんなで冷静にジャッジし、なるべくシンプルな色使いにすることにしました。今はポップなキャンディーカラーのスニーカーが流行していますが、私は“トレンドを追わない”と決めているんです。白、黒、ボールドタイプという自分のレーンをたどり続けるからこそ、手にした人はこのスニーカーは私が手がけたものだと分かる。だから“ジミーチュウっぽいけど、ヘイズっぽい”と思ってくれればそれでいい。それだけで大成功なんです」。

シューズからバッグ、スニーカーにカードケースまでバリエーション豊富にラインナップされた小木“POGGY”基史がキュレーションしたジミー チュウとのコラボレーション。ジミー チュウらしいハイクオリティな作りと、大胆に使用されたヘイズのクラシックスターが特徴のプロダクトは、レザー、ビーズ、キャンバスなど様々な素材使いも秀逸。メンズ、ウィメンズ両方での展開もポイントだ。
 
L to R
Shoes [White] ¥114400
Shoes [Black] ¥108900
Shoes ¥108900
Bag ¥328900
Shoes ¥108900
Bag ¥171600
Shoes ¥237600
Card Case [Red] ¥50600
Card Case [Blue] ¥50600
Chain Card Holder ¥60500
Shoes ¥84700
Phone Holder ¥188100
by JIMMY CHOO / ERIC HAZE CURATED BY POGGY (JIMMY CHOO)

 
 
モダンでクラフツマンシップにあふれた今回のコラボレーションは、同時にストリートとラグジュアリー文化の融合だと言える。多くの社会的影響を生み出し、今やすっかり当たり前になったこの事象について、彼はどのように感じているのだろうか。
 
「私の初めてのメジャーのコラボレーションは1998年のG-SHOCKだったと思います。その時はロゴをベルトに入れるだけで革命的に感じました。あれから25年が経ち、技術もマーケットも発達し、期待もより高くなりました。“ストリートラグジュアリー”という単語はメインストリームのアパレルビジネスとスケート、グラフィティ、ヒップホップといったアンダーグラウンドでインディペンデントなカルチャーとの自然な融合・進化だと思います。今はストリートブランドがハイブランドをパートナーとして見られる時代になりました。強いファンとアイデンティティを持っている2つのブランドが、一緒に新しい物を作ればそれは強力なものになる。それは自然な流れといえるでしょう。今回のコレクションにはラグジュアリーのDNAとストリートのDNAがあります。それが伝わればとても素晴らしいこと。私はずっとストリートで仕事をしてきましたが、このように新しいマーケットに自分たちの強みを広げ、お互いに高め合える仕事は一番楽しいんです」。
 
自身のブランドの価値を高めると同時に、ジミーチュウの美学をストリートへと広げる今回のコレクションは、数多くのコラボを重ねてきたヘイズにとっても思い入れの深いものとなったことは間違いない。

誰もが一度は見たことであろうお馴染みのヘイズのタギングロゴ。

ブルックリンのスタジオには、スニーカー、アパレル、スケートボードなどこれまでコラボレーションを行ってきたブランドとのアイテムがずらり。


パブリック・エナミー、ビースティ・ボーイズのロゴデザインも手がけたヘイズ。ヒップホップカルチャーとも密接にリンクしている。

彼にとって初のメジャーコラボレーションの相手となったG-SHOCK。1998年の第一弾以来人気を博し、何度もコラボレーションを行っている。

 
 

人間の手が関わっていたと
感じられるものを作りたい

 
これまでストリートからたくさんのグラフィティ、グラフィックを生み出してきたエリック・ヘイズ。その手描きのアートは、まさにストリートのクラフツマンシップが宿っていると言っても過言ではないだろう。では彼はなぜ手描きにこだわり続けるのだろうか。
 
「私はMacが発明される前に技術とクラフトを学ばなければならなかった最後の世代のアーティスト、デザイナー、アートディレクターです。デザイン制作もハンドレタリングも、全て手作業で行っていて、それが私の元々のスキルセットでした。グラフィックデザイナーになったのも、タイポグラフィと文字に対して情熱を持っていたからです。90年代、デザインの世界でデスクトップやイラストレーターが革命を起こし、私も使っていましたが、15年前にニューヨークに戻った時、インターネットの情報の流れるスピードが追いつけないほど早まっていることに気づいたんです。コンピューターのおかげで誰もがグラフィックデザイナーとなれる時代となりましたが、“これは自分じゃない。コンピューターから離れないとだめだ”と思った。そこで自分の個性であるハンドレタリング、ハンドスタイルへ戻ったんです」。
 
原点に戻り、鉛筆と紙で作業を始めた彼。それはとても大きなターニングポイントだったという。「自身のブランドはアパレルブランドでなく、アーティストブランドであることを目指し、人間の手が関わっていたと感じられるものを作りたいと心掛けるようになりました。生み出したものにはすべて自分の指紋が残っているということを大事にし、『自分のアートをデザインに反映させるにはどうしたらいいか』と考えるようになりました」。
 
コンピューターでは生み出せない人の温もり、人間らしさ。デジタル全盛の時代だからこそ、アナログな彼の手描きのグラフィックは、より輝いて見える。いちアーティストとして、アートを第一に考え、それをデザインに落とし込むという考え方は、そのまま自身のブランドのメインアイディアとなったという。そして人間らしさを感じるアートがなぜ大事なのかについて、彼はこう続けた。
 
「人間の気配を感じられることがアートとデザインの違いなんです。デザインはクリエイティブな問題解決でしかないですが、アートは人間の個性を表現するものだと思っています。作品が独自のオリジナリティを語っていないとしたら、それはアートとして成功していないと思うんです」。
 
手描きのヘイズのアートには、いつだって自分自身を表現するオリジナリティというマインドが宿っている。それが70年代から活動を続け、レジェンドとして賞賛される彼が今もなお活躍し、求められ続ける所以でもある。

手描きにこだわり、オリジナルのグラフィティを生み出し続けるヘイズ。原点は紙と鉛筆だ。

ブルックリンのスタジオに並ぶ多数の作品群。白、黒、グレーを基調とする作風は彼のベーシック。

レタリングは何度も何度も書いて、文字の関係性を体で覚える。真摯に作品に向き合う姿勢もグラフィティのパイオニアとしてリスペクトされる理由かもしれない。

作品に応じて使用するツールを細かく使い分ける。筆からブラシまでサイズも実に多様。インクとして墨汁を使用することもある。

 
エリック・ヘイズ
80年代にキース・ヘリングやバスキアなどと一緒にニューヨークを拠点に活動をスタートしたグラフィティ界のレジェンド。HIPHOPアーティストのロゴやジャケットデザインを手がけるほか、90年代には、自身の名を冠したアパレル・アクセサリーブランド「HAZE」を立ち上げ、これまでに数多くのブランド、企業とコラボレーションも行うなど、グラフィティアーティスト、デザイナー、コンテンポラリーアーティストとして多岐にわたって活躍中。
 
◯JIMMY CHOO
https://www.jimmychoo.jp/ja/eric-haze-poggy-collaboration.html
 
 
 

Photo Akiko Higuchi
Taijun Hiramoto
Coordination Mimi Tamaoki
Interview Mikuto Murayama
Edit & Text Satoru Komura

 

This article is included in

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