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COWBOOKS
Selected by Ruba Abu-Nimah
(Tiffany & Co.)

COWBOOKS
Selected by Ruba Abu-Nimah
(Tiffany & Co.)


文化と人の密度から生まれる発見豊富な街
ルバ・アブ=ニマ

以前、本誌でルバ・アブ=ニマをインタビューした時に彼女が深く語ってくれた日本の陶芸や本、デザインに対しての敬意。彼女が過去に資生堂のクリエイティブディレクターとして働いていた2年間は東京に住み、興味と憧れのあった日本の文化を身を持って経験することができたという。それから4年経ち、ニューヨークを拠点とする今、ルバは東京をどう思い、どんな魅力を持っていると思っているのだろうか。
 
 

同じ場所での散歩から
巡り合える新たな楽しみ

 
海外の人からすると、食やショッピング、整備された街そのものなど、想像以上にレベルが高い東京。そんな世界の大都市であるこの街に長期滞在すると、同じお店やエリアで満足して、その環境に慣れていってしまう。だが、ルバが東京に住んでいた時のことを聞くと、同じ行動範囲だとしても、新鮮な視点で街を見ていたようだ。
 
「毎週末、朝起きると、ひたすら東京の街を歩いていたよ。同じ場所を何度も訪れていたが、毎回行く度に窓のディスプレイや店のレイアウトが変わっていることが多くて楽しかった」。
 
子どもの頃に『Spot the Difference』という間違い探しの本があった。ルバは間違い探しに似たことを自分の日常でもおこなっていて、それが好きなセレクトショップであろうと街中の風景でも、小さな相違点を探していたようだ。東京に住んでいた時は、その絶え間ない発見の日々が当たり前だと感じていたが、ニューヨークへ帰ると、それが東京独自のものだと気付いたそうだ。
 
「コンスタントな発見がとても恋しいな。日本は歴史的に見ると非常に孤立していた期間が長いが、その素晴らしさは外国から来る人からすると、発見できるものが多い。新しいアーティストやブランドを発見できて、新しいことも学べて、今思うと、すごく懐かしく感じる。なぜなら、アメリカではそのようなことはあまり経験できないから。ここでは、マーケティング的な観点から物事が進められ、ブランドが立ち上げられ、プロモーションされて、どうしてもビジネスライクに感じてしまう。日本だと素直に情熱を持った人がコンセプトを重視して動いていると感じていたよ」。
 
東京在住の頃は加賀美健のSTRANGE STOREや原宿のギャラリーThe Massによく通って新しい作品やアーティストを見つけ出し、海外でも流行する前から知ることができたという。もちろん、大規模な美術館へも足を運び、国際レベルで活躍する様々なアーティストの作品も見たそうだが、東京という街ではどんなレベルのアーティストでも同じ電車に乗り、同じように誰もが生活をしていることを知り、衝撃を受けたという。それはアーティストに限らず、ファッションブランドでもカフェでも、様々なスケールを持つ人やカルチャーが共存していると思う。それを知った上で散歩すると、小さなギャラリーへ立ち寄っても、気になった裏道のカフェで一杯飲んでも、新しい発見をすることは間違いないだろう。その可能性を信じるからこそ、この東京では日常での絶え間ない楽しみができる。
 
 

東京らしさのある
発見の本屋COWBOOKS

 
10代の頃ロンドンに住みイギリスのカルチャー誌「TheFace」を愛読し、大学卒業後にウィメンズ誌の「ELLE」や「Glamour」で働いていたルバ。当時から印刷物こそ自分の世界観を広げてくれるものとして大切にしてきた。今住んでいるニューヨークの家にも5000冊以上もの本のコレクションを持つという。そんな彼女は世界中を旅をする際に現地で気になった本を片っ端から買ってニューヨークへ持ち帰ることを20年以上続けてきた。東京に住んでいた時もそうだった。本屋という場所はルバにとって発見する場所でもある。本屋ではどのような時間の過ごし方をしているか聞くと、「必ず本を熟読するわけでもないよ。もし、興味のある写真家の本があったとする。それを持っていなくて、目を通して『これは欲しいな』と思ったらすぐ買ってしまう。家でゆっくりと本は読めるから、本屋ではあまり読まないの。私にとって本屋は発見して、新しいものをインプットするための場所だからね」。
 
それを多く感じた場所の一つでもあるのがよく通っていたという中目黒にあるCOWBOOKS。「10年以上前に初めて東京を訪れたとき、最初に見つけた場所のひとつでもある。名前も好きだし、本も好きだから、見つけるのは当然だったわ」。COWBOOKSのセレクトについてお店に聞くと、「洋書和書問わず『面白い』、『人に見て欲しい』という本が常においてあり、来る人に『知らないこと、知りたいことがわかり、常に発見と感動がある場所でありたい』とのこと。発見と感動を与えようと心掛けているCOWBOOKSと新発見を追っているルバがマッチすることは当然。本を通して知らない世界に出会い、想像力も広がって、やがてその本屋を出た時には新しい考えや感情を家に持って帰れる楽しみがある。それは本屋の魅力でもあり、ルバにとっての東京の魅力でもある。

ヴィンテージの「おさるのジョージ」のボックスセットからリチャード・アヴェドンの写真集やブルース・ウェーバーのビデオセットまで、幅広いジャンルの貴重なアーカイブが並ぶCOWBOOKS。上の写真のように水の入ったコップをガラスケースの中に入れることで、貴重な本や雑誌の保湿をし、美術館の作品を保管しているように大事に扱っている。次世代にも新しい発見と嬉しさが本を通して生まれるよう、保持しているところから同店の本に対しての愛が伺える。


アメリカンデザインの象徴、ゼロ・ハリバートンのスーツケースと一緒に旅をするCOWBOOKSの大きいトートバッグ。東京へ旅した時に買ったバッグはルバの旅の相棒で、今でも使っているという。東京在住中に得た発見の可能性を信じるマインドをこのバッグによって思い出すに違いない。
Photo Ruba Abu-Nimah

彼女のグラフィカルな視点がはっきりわかる、2015年にインスタグラムに投稿したCOWBOOKSの本棚の写真。日本語が読めなくても内容やタイトル以外に、本の色、質感、並び順などに目が引かれて、グラフィカルに捉えたワンショットは本という存在そのものの魅力を表した写真だ。

 

 
ルバ・アブ=ニマ
元レブロン、ELLE、資生堂のクリエイティブディレクターを経て、Tiffany & Co. のクリエイティブディレクターとして活躍。奥深いデザインと美術史、文化の知識を活かし、ストーリー性のあるタイムレスなプロダクト、キャンペーンの数々を作っている。
 
 
 

Photo Yusuke Abe Interview & Text Mikuto Murayama

 

This article is included in

Silver N°12 Summer 2021

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