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COLUMN
about LIFE with GOOD DESIGN
Kunichi Nomura is a Japanese actor, writer, DJ, interior designer, and radio personality from Tokyo, Japan.
For Wes Anderson's Isle of Dogs, Kun is credited as co-writer and casting director, while lending his voice for the character of Mayor Kobayashi.

COLUMN
about LIFE with GOOD DESIGN
Kunichi Nomura is a Japanese actor, writer, DJ, interior designer, and radio personality from Tokyo, Japan.
For Wes Anderson's Isle of Dogs, Kun is credited as co-writer and casting director, while lending his voice for the character of Mayor Kobayashi.

 


 

ものが語り、そしてそれを周りが認める
それが普遍的な良いデザイン

内装屋としてデザインに関わる自分として、よくデザインについて考えることがある。良いデザインとは何か?とかクールなデザインとは何だとか。

 

若い頃はもう少し直感的で、そこに意味などあまり深く求めなかった。あの人が身につけているからいいデザインなんだろうとか、何となく新しく流行っている店を見て、いいデザインとはこういうものなのだとしか考えなかったわけだ。

 

ただいいとされていたデザインのものが置いてあるだけで、その家の住人はなんか洒落てると思ったりもした。その内、その裏側に潜むデザイナーなる存在を知り、彼らが作るものは全て間違いないと一人感心したりするようになったりした。

 

 

 

80年代を過ぎ90年代になり、気付けば世の中にはデザインされたということを強調したもので溢れ、デザインが良くなければ何も売れないというような風潮になった。その頃に初めて我に帰り、そもそもデザインとは何なんだと考えるようになった。デザインは何かを数値化できるものではない。一番軽いとか、速いとか、そういう数字の物差しが効かないもの。何がいいデザインなのか考えれば考えるほど分からなくなっていく。

 

その内にデザイナーとして一斉を風靡したものがやがてアート界で認められ、アーティストと呼ばれるようになるのを目の当たりにもするに及んで、デザインとアートの違いとはなんぞや?とさらにいいデザインに対する疑問は深まっていった。

 

アートはデザインより上なのか?大量生産品でもアートになるのか?誰がそれを決めるんだ?あぁ難しい難しい。いまだにそれが何なのか、俺にはそれに応える答えがない。そもそもそれは答えのない禅問答のようなものだ。あぁでもないこうでもないと考え、時には世の中で脚光を浴びるデザインにケチをつけ、嫌な世の中になったもんだと毒づいては、昔のデザインは格好が良かったなと懐古主義に走ったりもした。

 

 

 

そんなこんなしているうちに俺は編集者、そして内装屋となり、一応デザインに関わるようになるうちに自分なりに気付いたことが1つあった。デザインに関わる仕事にはまぁ必ずだが仕事を発注してくるクライアントがいる。そしてそこで完結するときもあるが、得てしてその先にはクライアントの客がいる。

 

例えばうちがレストランのデザインを頼まれた時、もちろん俺たちがやりとりをするのは発注者であるクライアントだ。彼らが想像し、予定する料理やデザートだのが美味しそうに見える、そしてそもそもクラインアントがこんなものを夢見てきたという理想的なサンプルを、こちらは最終的なデザインとして整え、落とし込む。

 

そしてその店を引き渡す時、予算内で彼らが満足をするものをこしらえなければならない。それがデザインなのだが、話は大抵そこでは終わらない。クライアントを満足させると同時に俺たちはその店に来るであろう、お客さん達が喜び、また来たいと思うようにすればどうすればいいか?というのを予測してデザインしなければならない。

 

クライアントさんの夢だけ叶えたとして、客が来ないだろうというものを作るのは仕事として無責任なのだ。だからクライアントさんがお客の予測を読み違えてただ自分の理想に突進している時、俺たちは一歩下がって、その先を考えなければならない。それはとても頭を使う作業だし、時に自分たちの「ここだったらこういうデザインがしたいな」という理想とはかけ離れていることもある。けれどもそこを丁寧にやって、例え引き渡しの時、クライアントさんがそっけない態度でただ一言、ありがとうで終わった数ヶ月後に、客受けが良くて商売が順調で、前より気に入ったなんて笑顔で言われると深い満足感でいつもよりタバコが美味く感じたりするのだ。

 

 

 

俺たちの誇りはどこかでメディアで取り上げられて、褒められることではなく、潰れない店、お客さんが喜ぶ店を作ることなのだ。デザインとは裏方の仕事だ。主役はあくまでその商品であり、成果はそのお客さんからの評価のみで語られる。それは何も内装だけなく、プロダクトデザイン、お菓子の梱包から、電話、車なんにおいてもだ。あるものをどうお客さんに受け入れてもらえるように化粧し、その機能性をより強調し高めるために工夫をする。それは全てその商品のために。デザインとはそういうものだ。

 

かつてアップルのスティーブ・ジョブズが、キーノート基調講演での自身の発表の場を除き、徹底的にプロダクトのみを紹介し、その背後にいるもの達の声や存在を排除していたのもそんなところから来ているのかもしれない。主役は商品、あとは黒子なのだと。

 

思えば今という時代は、黒子であるはずのデザイナー達が自身のライフスタイルをさらけ出し、だからこういうデザインになったのだと説得に必死となり、また自分の次のデザイン仕事を受けるために、プレゼン資料のようにして今手掛けてる仕事をこなすことが多過ぎる。クライアントを無視し、その金で自分の宣伝ばかりするような。

 

好きなことを作りたいのならば、アートをやればいいのだ。アーティストには誰にでもなれる。そこにはクライアントもその先の客も存在しない。誰かのために作るのではなく、自分の内なるところから湧き出てくる衝動を形にしたもの、それがアートなのだから。自分が満足であればそれでいい、デザイン仕事のようにクライアントの要望を聞いてやり直す必要もない。買いたい人がいればそれもよし、誰も相手にしなくてもそれもまたいい。

 

 

 

それが現時点で自分が学んできたことだが、今の世の中はどうしたわけかそれが逆転し、ごちゃ混ぜになっている。アーティストを気取るデザイナーが増え、クライアントを想定してものを作るアーティストばかりが増えている。俺は残念ながらアーティストではなく、そう自称したこともない。今まで存在したものから影響を受けまくり、クライアントの要望を編集作業のようにまとめていくデザイナー。そんなデザイナーなど星の数ほどこの世には存在する。

 

そうしてこなす仕事を俺は個人的に気に入っているのだが、この世にはすごい人がいるもので、寡黙に仕事をこなしながら、結果世界中の尊敬を集め、やがてアーティストとして勝手に祭り上げられたデザイナーというものも存在する。黒子のままものを作り続け、大量生産品の中で生産効率を考え、余計なものを排除し、お客さんのためにものを作りながら、ある種の明確な哲学を持ち込み、やがて人に認められるようになっていた天才デザイナー達。

 

 

 

例えば椅子で有名なフランスのジャン・プルーヴェ。身近な素材を組み合わせ、いかに効率よく、無駄のないデザインで、長期の使用に耐えうるものが作れるかということを突き詰め、その過程で生み出されたデザインは、完成されたフォルムをあらゆるプロダクトに表現し、後の時代を生きる俺たちのようなものからの羨望と、これ以上考えられるわけないじゃんという絶望を感じさせた人。彼はアート作品を作ろうとデザインしていたわけではないだろうが、やがてその素晴らしさから世界に芸術品として認められるに至った。

 

ドイツの電機メーカー、ブラウン社のデザイン主任を30年以上に渡って務めたディーター・ラムスも同じ。Less but better、より無駄なく、より良くという信念から、家電のあらゆるデザインをし、やがて製品達自体がアートとして認知され、アップルのデザイン主任ジョナサン・アイブ達に多大な影響を与えたが、その彼も一介のデザイナーとして、哲学はありこそすれ、アーティストとして認められようとするような野望はなかった。

 

別にアーティストがデザイナーの上であるとか、最終の目的地ではないが、ものを作る時、それを使う人たちのことを考え抜き手がけたものが、自然に賞賛を集め、やがて美術館に飾られる彫刻や絵画を残したアーティスト達と同じように語られる。そんなもの達こそ素晴らしいデザインで、持つことで、何か日常の気持ちを豊かにしてくれるのではないだろうか?自分が語るのではなく、ものが語り、そしてそれを周りが認める。それが普遍的な良いデザイン。

 

 

 

そしてもう1つ、いろんな屁理屈抜きにまずいいなぁ、他人がどう思うと俺はこれが好きだなと思えるもの。自分の気分をよくしてくれるのだから良いデザインに決まってる。なんだかんだそう考えるようになってきた。それが現時点での良いデザインへの考え方。もしそんなものを自分で探したいとしたらどうするか?そりゃ簡単だろう。ライフスタイルを語り、必要以上に説明しまくるもの達の声に惑わされず、見て、触れて、自分が良いと感じたものから手に取ればいいのだ。情報が氾濫する中で、それだけが自分にとって良いデザインとの出会いをもたらしてくれる座標なのだから。

 

 

野村訓市
1973年東京生まれ。編集者、内装集団Tripster主宰。J-WAVETraveling without moving』のパーソナリティーも務める。ウェス・アンダーソンの映画『犬ヶ島』の脚本、キャスティングに関わったことも記憶に新しい。

 

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