日本の美意識をテーマに、工芸とARTの狭間を行き来する新世代のアーティストたちを紹介するクリエイティブディレクター南貴之による本連載。第2回目に南が紹介するアーティストは木工作家の小山剛だ。作品は木で作った壁掛けの絵。
「 軽井沢にアトリエを構えている木工作家の小山さんは、元々は家具を作ったり椅子を作ったり木工の師匠の元で工芸をしっかり学び、その後独立して作家活動を始めた人。はじめは木のお皿とか用途のあるものを作っていたんだけど、僕が知り合った頃にはサンフランシスコのPlaymountain EAST(プレイマウンテン・イースト)で展示をやっていました。彼の木工作品そのものも素敵なんですが、特徴的なのは展示の空間的な演出がとても上手ですごくアート性を感じました。小山さんのアイコニックな作品は一輪挿しと木の輪だと思うんですが、今回はこの連載の為に『木の絵』を作ってくれました。壁にかけるだけのすごくシンプルでミニマルな作品なんだけど、虫喰いの黒柿が持つクセを個性として捉え、美しく表現している所が気に入っています。技術があるのに技術的なことを表立って見せないように作るという姿勢にも、とても魅力を感じますね。そんな技術のある人が用途のない作品を作り、しかも空間まで演出し表現するというところに惹かれます。木工系の人は用途のあるものを作りたい傾向にあると思うんですが、小山さんのように立体で考えて、空間を作れる人はあまりいないなと。
空間を作れるというのは、木工作家とは別の才能が必要だと思うんですよ。アーティストは作っているものもそうですが、それと同じくらい、どう置いてどう魅せるかということも作品だと思うので、そういった面でも素晴らしいアーティストだと思います」。
南 貴之
今年の3月に1周年を迎えるヒビヤ セントラル マーケット、自身のブランド、グラフペーパーのクリエイティブディレクター。その他数多くの店舗ディレクションやブランディングを手がける。本物を見極める審美眼は業界でも一目置かれる存在。
小山 剛
木工作家。1983年新潟市出身。2004年より木工家の谷進一郎氏に師事。5年半の修行期間を経て2010年に軽井沢にて独立、アトリエを構える。2013年西麻布Rでの初個展以後、国内外で個展を多数開催。工芸とアートを行き来する活動を行う。
Select Takayuki Minami | Photo Masayuki Nakaya |