Loading...

Art and Time Photography & Art
時間に対して向き合った写真とアート作品を知る

古今東西、数々の作家が「時間」をテーマに作品を発表してきた。人々の生活において重要なものである時間。時間に追われて生きるのか、時間を操って生きるのか。様々な感情を巡らせるこのテーマに対して作家が作品を発表することは必然的といえる。
一瞬の出来事を収める写真もまさにそうで、ストレートフォトグラフィーは、切り撮られたその瞬間を観ることで感情が揺さぶられるもの。アートもコンセプチュアルに時間を題材にした作品は多い。そういった時間と密接な作品を鑑賞することは、時間と向き合うきっかけにも繋がるはずだろう。PART6では、そんな時間を捉えたストレートフォトグラフィーとアートを紹介する。

Art and Time Photography & Art
時間に対して向き合った写真とアート作品を知る

古今東西、数々の作家が「時間」をテーマに作品を発表してきた。人々の生活において重要なものである時間。時間に追われて生きるのか、時間を操って生きるのか。様々な感情を巡らせるこのテーマに対して作家が作品を発表することは必然的といえる。
一瞬の出来事を収める写真もまさにそうで、ストレートフォトグラフィーは、切り撮られたその瞬間を観ることで感情が揺さぶられるもの。アートもコンセプチュアルに時間を題材にした作品は多い。そういった時間と密接な作品を鑑賞することは、時間と向き合うきっかけにも繋がるはずだろう。PART6では、そんな時間を捉えたストレートフォトグラフィーとアートを紹介する。

15 Untitled Works in Concrete,1980-1984  Donald Judd

 
 
 ジャッドがテキサス州の南西部に位置するマーファという寂れた町を初めて訪れたのが1971年のことだった。マーファはメキシコとの国境に位置するエルパソから、車でたっぷり三時間ほど走って辿り着くところにある不便な町である。しかし、その地に特別なものを感じたジャッドは、作品を売って得た資金やコレクターからの援助を受け、使われていなかった銀行やグロッサリーストアを自身のスタジオへと断続的に作り替えていく。
 
 加えて、ひときわスケールの大きな作品の展示スペースとして、陸軍が所有していた倉庫や広大な更地を整備して、自身の作品と友人たちの作品を室内外で恒久的に展示したのである。この「恒久的展示」というのは、アート界の目まぐるしい移り変わりにも影響されることなく、いったん設置がされたらずっとその場で展示され続けるということを意味する。何十年経とうが、それが設置された場所から動かされることもないため、時間をかけて環境や風景に溶け込んだアート作品が点在しているマーファには他にはない独特の時間が流れていて、多くのアートファンが世界中からこの小さな町に巡礼するかのように訪れているのである。

100 Untitled Works in Mill Aluminum  Donald Judd,1982-1986

 
 

時間はすべての人に平等である

 巡礼といえば、マーファと同じテキサス州にあるヒューストンには、アート界ではよく知られているチャペルがあり、それがニューヨークで誕生した抽象表現絵画の重要人物として知られるマーク・ロスコが残した「ロスコ・チャペル」だ。しかし、チャペルといえども、ここにはキリスト像も十字架も宗教的な装飾も一切ない。そこにあるのはロスコがこの空間を想定して描き上げた18点にも及ぶキャンバス作品の連作のみであり、建築家のフィリップ・ジョンソンが設計した八角形の空間に、ロスコが命を絶った翌年の1971年に設置されて以来、ここから動かされたことは一度もない。

The Rothko Chapel,1971  Mark Rothko

 
 
 地元の著名なコレクターとして知られるデ・メニル夫妻から構想を聞かされたロスコは、1964年から1967年にかけてこれらを完成させた。ロスコの絵は油絵の具を水彩のように薄く溶き、何層も塗り重ねていくことによって生み出される深く透明感のある画面が特徴なのだが、確かにしばらく凝視していると最初に見えていた色とは異なる色彩が浮かび上がってくる。それは海の色や夕焼けが刻一刻と動くように(ここにも時間の流れが内包されている)、まるで生命を持っているかのごとく絵の奥から淡い光が静かに放たれているようなのだ。
 
 嬉しいことに、ウォルター・デ・マリアの作品と同様にロスコ絵画の恒久的な展示を千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館で見ることができる。7点のロスコの巨大な絵画によって構成された「ロスコ・ルーム」がそれだ。
 
ロスコは自分の作品が空間と一体となることを望んでいたため、ここでも大きな一室まるごとが展示室と使われているわけだが、極端に照明を落としたその厳かな展示室は、ヒューストンのチャペルと同じような静謐かつ精神性の高い雰囲気を持った空間であり、瞑想的なゆったりとした時間の流れが感じられるはずだ。

Rothko Room,1998  Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko
Photo:Osamu Watanabe

Related article