Style File 09 fragment design Hiroshi Fujiwara

『感覚的に面白い事を探し続ける』 藤原ヒロシが語る自身のスタイル

スタイルとは何か? それは、その人ならではの生き方であり、服の着方であり、モノとの付き合い方だ。ファッションはお金で買えるけれど、スタイルは買えない。だけど、人から学ぶことができる。スタイルについて考え続ける人生はきっと楽しいものになるだろう。

Outfit
ワンレングスのヘアスタイルにオークリーのサングラス、ニットやスウェットとデニム。気取っていないが計算されていて、全てにこだわりがある。まさにそんな藤原ヒロシの象徴的なスタイルだ。

藤原ヒロシ
ファッション・カルチャープロデューサー、ミュージシャン、大学教授、フラグメントデザイン主宰。80年代東京のストリートカルチャー黎明期から、現在に至るまでシーンを牽引し続ける。近年では、モンクレールやフェンディといったファッションブランドからマセラティといった高級車メーカーなどとの数多くのコラボレーションを行う。

Watch with Chrome Hearts band
アップルウォッチとロレックスのエアキング(ティファニーコラボモデル)にそれぞれクロムハーツのベルトを装着した藤原の腕時計。「アップルウォッチの方は以前からずっと使っていたものです。ロレックスのベルトもこれくらいシンプルなものがクロムハーツから出たら良いと思っていた矢先、発売されたようです。これは最近誕生日プレゼントでもらい、嬉しかったのでエアキングに装着していつも身につけています」。

Tote bag by Goyard
「このゴヤールのトートバッグは、コラボレーションでもなく新宿の伊勢丹のお店でオーダーをしてロゴをプリントしてもらったものです。ちょうどいい大きさで、軽く持ち歩きやすいので普段からよく使っています」。持ち手についたさりげないリトゥとフラグメントのコラボレーションによるフレグランスカータグが、ほんのりと良い香りを漂わせる。自分流にカスタムして使う、藤原らしいアイディアがこのバッグからも伝わってくる。

TAnker Prime Wall Charger Fragment Edition
「充電器はすごく重要な道具だと思っています。充電コードを挿せる口が3つあるのでこれ1台でMacBookやiPhone、iPad、すべてを充電できます。充電速度に関わるので僕は常にワット数が大きいものを使用するようにしていて、これは最高出力が100ワットあります。旅に行くことが多い僕にとってこれは必需品。新幹線って、コンセントが何故か下に向いているので、充電器が落ちやすい。それが嫌で根元にラバーコーティングがされていて落ちにくくなっています」。
Interview with
Hiroshi Fujiwara
感覚的に面白いことを吸収し
エディットしていく 藤原ヒロシ

音楽やアート、ストリートカルチャーとファッションが繋がった、ボーダーレスな東京のミックス感。今でこそ当たり前になったが、このスタイルのオリジネーターこそが藤原ヒロシ。世界のファッションやストリートカルチャーの歴史を紐解くと、必ず藤原ヒロシに繋がる。それらのカルチャーを愛する者にとって、藤原の影響を受けてこなかったものはいないのではないだろうか。藤原が主催するフラグメントの積極的なコラボレーションの数々を見ると、今もなお彼のクリエイティビティは留まることを知らない。だが、彼のことを知ろうと前のめりになる我々を横目に藤原は至って冷静だ。なぜなら、本人は面白いと思うことをただ自然と吸収し、咀嚼し、アウトプットし続けているというスタンスにすぎないからである。「自分は、サンプリングするのが得意なんです。例えば、街を歩いていて、『この人のシャツいいな』とか『グレーのスウェットに白いシャツいいな』と思うと、すぐにそれを取り入れる。ニュースで政治家を見て『黒いジャケットに青いシャツいいな』とか思ったりもします。見ていいなとか思ったことを、自分の中でエディットする、そんな感じのことをずっと続けています。単に僕がその時に面白いな、とか、着たいなと思うものがすべてなので、言葉にしづらいし、好きなものに共通点があるのかさえわからない。僕がいいと思うものって、本当に感覚的なものなんです。洋服にしても例えばカレッジっぽいグラフィックものが着たい日もあれば、無地でシンプルなものが着たいと思う日も。派手なものを着たい日だってあります」。本当に感覚的に、気が向くまま行動をしていると藤原はいう。そんな藤原が今面白いと感じて普段身近にあるもの、それがここまでのページで紹介をしてきたプロダクトたちである。ファッションスタイル的には、ここ最近だとスウェットやニットにデニムパンツ、オークリーのアイウエアやゴローズのジュエリーというのが定番となっているが、これらも「感覚的なもの」だと藤原は話す。

Key Board “GZ-5” by Casio
藤原が作曲活動の時に使用するという、カシオから1995年に発売したMIDIキーボード。「昔、レコーディングスタジオに行くとよく置いてあったアナログなキーボードです。サイズが小さいから机の上に置いておいても邪魔にならない。ギターを弾きながら曲を作ったりするときによく使っています」。

T-Shirts by Sequel
藤原が関わる機密性の高いブランド、シークエルのTシャツ。「昔からグラフィックを作るのが好きで、最近もTシャツのグラフィックを考えたりしています。パブリックドメインのレオナルド・ダ・ヴィンチやゴッホの絵を切り抜いたり、Weekendというお店を友達と一緒にやっているのでそのロゴを入れたり。僕は夏でもTシャツ1枚という格好はあまりしませんが、Tシャツの上に白いニットを着て、内側からプリントを透けさせたりしています」。

Japanese Tea
普段選ぶ飲み物は基本的に冷たいお茶だという藤原が、最近出会った美味しい一本を紹介。「この間、食事に行った時に出てきたのがこれ。飲んでみるとめちゃくちゃ美味しかったので、それからアマゾンで買っています。値段はそこそこしますが、瓶が可愛いこともあって、お客さんがきた時に出したいですね。実は、僕は海外に行く時にいつも5、6本ほどのボトルのお茶を持って行きます。飲み終えると帰りはその分荷物が入るから、そこを買い物しても良いという自分の中のリミットにしているんです」。

Guiter
藤原の音楽活動にとって必需品であるギター。「ギターを弾くというアナログな行為が好き」だと藤原は言う。ギターを弾く藤原が着ているニットは、2月に4Kレストアで40年ぶりに公開されたトーキングヘッズのドキュメンタリー映画“STOP MAKING SENSE”のタイトルを配した、アンダーカバーの2013年春夏シーズンに発売されたもの。
藤原のワークスタイルに
重要なマックブック

東京での生活は、オフィスやカフェで仕事をすることが多いからこそ、厚着をする必要もあまりない。そのため、夏も冬も基本的に同じような格好で過ごすことが多いようだ。東京だけではなく、海外での仕事も多い藤原。取材をしたこの日もドバイから帰国してすぐだった。世界中を旅することや東京でのオフィスやカフェを拠点とした生活。そうした仕事の仕方から、必然的に必要になってくるものたちが藤原にとっての本当のスタイルなのである。「スタイルって、単に洋服を合わせるとかそういう話ではないですよね。自分の立場も関係してくる。いろいろなことを考えながら編集して作り上げていくものなのかもしれません。僕の仕事は基本的にマックブックが1台あればできてしまうんです。デザインはもちろん、曲だって作れてしまう。マックブックはもっと高価でも良いかなと思うほど、これがなかったら仕事ができない。そういう意味ではマックブックが一番の僕のスタイルを作っているものかもしれません。グラフィックとかデザインをする時は、紙とペンを使って描いたり、音楽ではギターを弾きますが、最終的にはすべてマックブックに取り入れて編集しますからね」。

Stainless steel bottle
真空ボトルメーカーの代表格でもあるスタンレー。過去にもスタンレーとスターバックス、フラグメントのトリプルコラボレーションを発売したが、今回はスタンレーのみと製作。「スタンレーらしさをそのまま活かしたかったので見た目はあまり変えていません。僕は冷たい飲み物しか飲まないので、これに入れておくとずっと冷たいままなのが嬉しいです。どこかに持って行くわけでもなく、寝室で喉が渇いて目が覚めたりした時に使っています」。

Leica M11
「僕はなんでもそうなんですが、ものをそのまま使うというのはあまりしなくて。できることなら自分らしくいじりたいと思っています。このライカのM11もそうで、以前、ボディの表面をエルメスのクロコダイルレザーに貼り替えてもらいました。もう今ではそのサービスがなくなってしまったのでこれは貴重な1 台。ライカのカメラは、長く使い続けていて、旅をするときや写真を撮りたいときに持ち歩いています。スマートフォンでも写真は撮れますが、カメラで写真を撮るのが好きですね」。

Bag by Fendi × Fragment
今年1月に発売され話題を呼んだフェンディ、フラグメント、ポケモンによるトリプルコラボレーション。この2つのバッグは、藤原自身が持ちたいフェンディのバッグという考えで製作。「普段の荷物は、PCやヘッドフォン、電源類、あとは家や車の鍵くらいしか持ち歩かないのでこれくらいのサイズがちょうど良いんです」。

Porcelain by Niisato Akio
工芸品にはあまり興味がないという藤原が集めているのが陶磁器作家、新里明士の作品。「新里明士さんとは20年近く前に一緒に仕事をしたことがあり今でもたまに展覧会に足を運びます。新里さんの作品の中でも特にこの2つは好きです。シンプルで薄く、綺麗ですよね。青い香炉は形がちょっと変わっていて、なんとなくビーツのスピーカーのような形で気に入っています」。
新しいものとの出会いを
続けるということの大切さ

藤原の著書『パーソナル・エフェクツ』の冒頭でも「コレクターだと思われているが自分ではそうは思わない。なぜかというと、僕はモノを使い倒すから」と書かれているが、今回も藤原が紹介してくれたものたちは、今の生活の中で実際に使っているリアルなものたちだった。様々なブランドとコラボレーションを重ねる藤原だが、それらも「基本的には自分が使いたいと思えるものを考えて作っている」という。そんな藤原が、最近面白いと思っていることとは何か。藤原に質問をするとこう答える。「本格的にcovid-19の影響も落ち着いて、移動が元通りになったことですかね。この前、ドバイに行ったこともそうですが、いろいろなところに行くのはやはり楽しい。自分とは全然違うタイプの人たちに会ったり、普段は行かないようなイベントに行ったりすると新しいものごとに出会えます。ドバイで目にしたカンドゥーラと呼ばれる民族衣装が面白いなと思ったんですが、流石に自分じゃ着れない。カンドゥーラは、日本の生地を使っていることも多いみたいですが、生地やボタンが特徴的で面白かったりするので、そういうのは何かで取り入れても面白いな、と。そうやって海外に行くとインスピレーションを受けることが多いです。それに、飛行機の中で過ごすことが好きなので、溜めておいた映画を観る時間や仕事をする時間が心地良い。最近は飛行時間が長ければ長いほど嬉しいと感じたりします。普段、この時期だと休みがあればスノーボードに行くことが多いのですが、今年は雪が少ないこともあってあまり行けていない。暇が嫌いなので、スノーボードに充てていた時間をどうやって使えば良いかがわからない。最近だと周りの人たちが麻雀にハマっていることもあって、僕もやりはじめました。週に1度は雀荘に行っています。雀荘も昔と全然違って、禁煙で綺麗な店内。ウーバーイーツも呼べて、居心地が良いんです。麻雀は会話を楽しむ遊びだと思っているので、5、6時間ほど4人で向き合いながら、『ドバイどうだった?』とか『最近何やってるの?』みたいな会話をする。コミュニケーションツールみたいなものですね」。

話を聞いていると、藤原が行うすべてのものごとは、自然体で面白いと思ったことをやっているだけ、それに尽きるとわかる。その感覚が鋭いからこそ、藤原のクリエイティブは冴え、ユニークなアイディアが生まれていくのだ。ここまでの名声を得てもなお、藤原は現状に満足をせず、常に新しいものを求め続け、自分の身の回りのストリートに落ちている初期衝動のようなものを誰よりも早く見つける。そして、それを自分の中でエディットしながら、新しいスタイルを作り、我々を熱狂させ続けてくれる。自分が街で感じたリアルで嘘のない感覚からすべてを生み出す。だからこそ、世界は藤原ヒロシのことをこう呼ぶ。キング・オブ・ストリート、と。

Photo Yuto KudoHair Nori TakabayashiIntervier & Text Takayasu Yamada

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