Style File 05 Actor, Skibum aristocrat Shota Matsuda

「スタイルとは本当のこと」 松田翔太、スタイルについて語る

松田翔太
様々な映画やドラマ、CMなどで活躍する俳優でありながら、趣味であるスキーではメーカーからスポンサーがつくほどの本格派として知られる。そのほか、車やバイクなどの乗り物のほか多くの趣味を持つ。

1966 Jaguar E-type Series1 4.2Liter Coupe
「1966年製のシリーズIの後期。排気量が3.8Lから4.2Lになった、僕が一番好きな頃のEタイプ。前から見ても、後ろから見ても、中も、全部格好良い。新しいとか古いとか、高いとか安いとかではなくて、本当にハンサムで美しい車に乗りたいだけなんです。乗ると、景色が変わって見える。本当に自分だけの時間になるから運転中は音楽もかけません」。
全長:448cm, 全幅:168cm, 全高:121cm

T-shirt ¥33000 STONE ISLAND (STONE ISLAND JAPAN)
Necklace ¥39600 Pierce ¥58300 by CAREERING
Other Items [Model’s Own]
Interview with
Shota Matsuda
本物を正しい場所で正しく使う
そして、使い方を知っているということ

スタイルって何かというと、僕が思うに“本当のこと”なんだと思う。普段からよく、何かのカルチャーを意識したスタイル、という表現を聞くけれど、そういうのは本物のスタイルではないと思う。そういう時によく例にあがるのが、サーファーやスケーターのカルチャーのスタイルだったりするんですが、彼らが格好良いのは、そういったカルチャーを心から愛していて、シーンに根付き、必然的なものを選んであるべき姿になっていったから。それこそが、本当のスタイルなんです。それは、すべてのカルチャーやスタイルにも言えることだと思っています。ファッションショーに出てくるような、街では中々着れないようなファッションだって、普段からそういう社交場にお洒落して出入りする人にとっては、本当のことと言える。だから、そういう本当の自分の趣味と繋がっている格好をしている人を見かけた時に、『あ、この人スタイリッシュだな』って思います」。

今回のスタイルファイルを通して、松田が見せてくれたもの。それは、愛車や洋服、普段から持ち歩く小物やスキーに関わるものなど全てが俳優でありながら趣味を全力で楽しむ松田にとっての必需品であり、それぞれに深いストーリーがある、まさに“本当”なものたち。そしてハイ&ローな価値観で選ばれた数々のプロダクトは、松田ならではのライフスタイルを楽しむ哲学が表れている。

「僕のインスタを見てもらうとわかるんですが、プロフィールに“Actor,Skibum aristocrat”って書いていて。スキーバムとは、スラングでスキー馬鹿のこと。ヒッピーみたいに人生をかけて雪を追いかけ、お金が全然ないけれど楽しいからそれで幸せなス キー馬鹿のことです。そこに僕は、貴族を意味するアリストクラットを加えている。プロフィールにその言葉を入れているのは、自分の生活は東京で会食があったり、ファッションショーにお呼ばれしたりするドレスアップ的な瞬間もあったりするから。高貴なるスキー馬鹿っていう、自分らしい言葉だと思ってつけています」。

バックカントリースキーをするために、長野や北海道、はたまたカナダの過酷な山奥まで。良い場所があればどこにでもいくという松田。だが、東京をはじめとした都会での生活が中心な松田にとって、アクターであり、スキーバムとしての2つの側面を持ったファッションスタイルを大切にしているという。

Coat by Applied Art Forms
「最近は、マルジェラかアプライド アート フォームスの服をよく着ていることが多いです。アプライド アート フォームスは、コールドプレイのベーシストであり友人のガイ・ベリーマンが作っているブランド。彼もカーコレクターで、車の文化や日本も好きで、日本の縫製工場とか第二次世界大戦で使われたミリタリーウェアの機能性だったりとかに詳しくマニアックな服作りをしています。普段はマルジェラですが、雪山に着いた時などリラックスできる時間は、彼の服を着ていることが多いです。本物の生地や構造だからこそ、過酷な場所に馴染みます」。

Ski Gear
「スキーのギアは、ブラッククロウズスキーというブランドのものが多いです。道具選びは、僕は危険なところに行って滑るので信頼できるものしか選びません。まず、壊れないもの。折角、楽しみに行っているのに大怪我でもすれば他の人に迷惑をかけるし、悲しむ人もいる。だから本物を使うことが大切だと思っています。少し前に、カナダにあるマウントコロンビアまでバックカントリー スキーをしに行きました。詳しい人の勧めであるスポットに着くと、大きな看板に大きな文字で“Local Only”って書いてある。そこに住んでいる人しか入れないスポットなんです。それでもローカルの人たちは優しく迎え入れてくれました。『日本からここにきたのか?』って。それは、僕たちがいかにスキーバム(詳細は後述)かわかってくれたからなんだと思います」。

Maison Margiela
「空港からホテル、北海道やカナダの山奥、ロンドンまでどこにでも着ていけるメゾン マルジェラの服は僕にとってまさに制服のような感じです。こういうノーカラーのコートやジャケットは、モードにも日本の道着の様にも見えて、そういうバランス感が好きでよく着ています」。
Coat ¥438900 by Maison Margiela (Margiela Japan Client Service)
Pierce ¥58300 by CAREERING
Other Items [Model’s Own]

Books
「どれもずっと影響を与え続けてくれる本たちです。僕は、広告の世界を見て映像に興味を持ちました。映画は映画館やDVDで観ることができるし、テレビは番組表を使って見たいものが見れますが、CMはランダムに出てくるもの。もう一回見たいと思っても、次にいつ見られるかわからない。15秒で衝撃を与えるような世界がまさに侍の剣技のようです。そういうことで、広告の世界で僕が幼い頃から影響を受けている大貫さんやタグボートの方々の作品集です。そのほかは、僕の中でのスーパースターであるヴィンセント・ギャロや映像プロダクション“カナダ”の作品“クリームキャラメル”、いつか家を建てるならこんな家を建てたいと思っている建築家 ルイス・バラガンの自邸“バラガン邸”を記録した本、大好きなデザイナーであるマーク・ニューソン、ポルシェが生沢徹率いるレーシングチーム“チームイクザワ”を取り上げた本など、どれもが自分のバイブルです」。
1. TAGBOAT “10 Years”
2. VINCENT GALLO “1962-1999”
3. CANADA “Creame Caramel”
4. CASA BARRAGAN
5. TAKUYA ONUKI Advertising Works(1980-2020) “Advertising is”
6. MARC NEWSON “Works”
7. Type 7 Volume 4: Team Ikuzawa Edition
世界中どこにでも行ける
制服のような服を着る

「基本的な格好は、メゾン マルジェラのジャケットとシャツ。マルジェラの服は、過剰なロゴがなく派手すぎない。会った人に対して、ブランドものを着ているというロゴの圧力みたいなものがない。派手な服でお洒落を頑張っていると、合わない場所もあるしスキーバムな友達にも会いづらくなる。『やっぱり、翔太さんって違いますね』みたいな急に距離感のある雰囲気になって馴染みづらくなったりしますから。でも、マルジェラの服ってそうではないんです。それでいて、服が好きな人であれば良い反応もしてくれる。そのバランス感が好きなんです。特に僕は、パリやロンドンなどヨーロッパに行くことが多いので、そういう街にはよく馴染みます。空港やレストラン、ホテルも余裕で行ける服。そういった格好に加えて、僕は小さなカバンが好きで。パスポートが入って財布やスマホを入れられるサイズくらいのものを海外ではよく持ち歩きます。酔っ払ってもそれだけ持っていれば大丈夫という(笑)。つまり、世界中どこにでも行けるような格好が自分らしいファッションスタイルです」。

そういった、洗練されながらもこだわりのあるファッションスタイルに加え、象徴的な顔周りの要素といえば、センター分けで横と後ろを刈り上げたヘアスタイルに両耳のフープピアスだろう。このアイコニックなスタイルになった理由を聞くと、そのきっかけとなったストーリーは松田が小学4年生の頃にまで遡るようだ。

「当時、僕は龍平(松田龍平)と一緒にイタリアへサッカー留学に行っていて。その時、ある家に居候させてもらっていたんですが、その家には三姉妹がいました。そのうちの1人、サルビナっていう子の彼氏にマルコという人がいたんです。マルコは背が高く、顔は整っていて、もうとにかくハンサム。『イタリアでは、挨拶はほっぺにキスするんだぜ』とか、いろいろなことをマルコから教えてもらいました。イタリアのものに今でも格好良さを感じるのは、その頃の経験があるからかもしれません。そして、マルコの髪型は中分けで後ろを刈り上げて、両耳にはフープピアス。それはもう印象的だった。高校生の頃にはすでにマルコに影響された格好をしていました。だから、実は僕の髪型やピアスはマルコから来ているんです」。

Ford F-150 Raptor
「これは 26歳の時に買って乗り続けている車です。高級車だと傷や汚れが気になりますが、これは気にならない。普段は、現場に行けばヘアメイクや衣装も着せて頂いてという感じですが、このラプターに乗るとなんでも良いやって気持ちになる。そのバランスが自分にとってすごく良いんです。でも今は、10年経ってやれてきたのもあり、ほとんど北海道に置いています。ピックアップトラックで、後ろに荷物を積んで、雪山やアウトドアを楽しむ為の車になっています」。
全長:589cm,全幅:219cm,全高:199cm

AGV Pista GP RR Glossy Carbon
「バイクのヘルメットを収集しています。説明ができないんですが、単純に格好良いと思って。何十個も持っている中で一番好きなものがこのAGVのフルカーボン。ドゥカティなど僕はイタリア物に幼少期から惹かれることが多くて、その頃に憧れていたものを今被っている感じです。カーボン素材も好きで、軽いので長距離のツーリングも楽です」。
T-shirt ¥12100 SUNSPEL (Sunspel customer service)
Necklace¥39600 by CAREERING

Essentials
「自分はハイ&ローなバランスが好きなんです。あとは全て人との繋がりを感じるものですね。例えば、ナイフの形をしたキーホルダーやクロムハーツのマネークリップは妻からもらったもので、クロムハーツのキーホルダーは、僕が16歳の時にロンドン留学へ行く時におばさんからプレゼントしてもらったもの。でも、無くしてしまい、自分で全く同じものを買い直したものなんですけどね。デュポンのライターは、ジェームズ・ボンドに憧れて。1962年に公開された007のドクター・ノオという映画があるんですが、そこでショーン・コネリー扮するジェームズ・ボンドが、カジノのカウンターで『Bond, JamesBond』と言いながらタバコに火をつける。その時にキーンといった金属製の蓋が開く心地いい音が響くんです。それがデュポンなんですよ。でも普段吸うタバコは1mmの100S。そのコントラストが気に入っています。普段よく使っている櫛もずっと通っているサウナがあってそこで貰ったもの。あと、アイウェアはとにかくたくさん持っています。勿論、変装用でもあるんですが、直接目に入る光があまり好きではないこともあって、眼鏡のレンズもブルーライトカットだったりします」。
1.Sunglasses “MEMPHIS” by Casablanca
2.Glasses “flight-seven” by Dita
3.Sunglasses “1378” by Cutler And Gross
4.Earrings by CAREERING
5.GRIII by RICOH
6.Tank Louis Cartier with NATO Belt
7.Keyholder by Prada
8.Lighter by S.T. Dupont
9.Money Clip by Chrome Hearts
10.Keyholder by Chrome Hearts

出会いのストーリーも大切
憧れ続けて手に入れたEタイプ

取材日は、ランと名付けられた台風7号の影響で東京も不安定な天候の1日だった。鉛色の空、コンクリートの建築が建ち並ぶ東京のグレイッシュな景色の中、鮮やかなメタリックブルーの流線型が美しいジャガーのEタイプを運転して松田翔太は現場へ現れた。

「格好良いですよね。もう買って5年くらい経つけれど、ガレージのシャッターが開いて車体が見える度にいまだに心がときめきます。この車に出会った時のストーリーが面白いんです。昔からこの車には惹かれていたんですが、20代前半の頃、友達と広尾を歩いていると、目の前にブルーのEタイプが停まっていた。それが初めて本物のEタイプに出会った時でした。それまでは写真でしか見ていなかったんですが、実物を見た時に『なんて美しい車なんだ』と思いました。道端で、いろんな角度を携帯のカメラで撮りましたね。前から、後ろから、真横も、ボンネットの輝き、もう全部綺麗だと思った。そうしているうちに、背の高いおじ様がすごく綺麗な奥様を連れて乗り込んだんですよ。それで、『うわ、格好良い……』と思った。エンジンがかかり、直6エンジンのヴゥーンっていうあの音が響いて、さらに僕も興奮した。そしたら目が合って、挨拶のつもりで僕は手を挙げた。そうしたら、そのおじ様はまるでパイロットの敬礼のような手振りを僕にして、颯爽と外苑西通りを西麻布方面へと走っていったんです」。街でたまたま出会ったEタイプの美しさの余韻が残ったまま、数年経ったある時、松田のもとに良いEタイプの車両が入ったという情報が届く。状態がよく、カラーもあの時に見たブルー。「すぐに購入を決めた」と松田。

「Eタイプを買ってから、堺正章さんやいろいろなクラシックカー好きな先輩方と車好きが高じて知り合えることになっていくんですが、そうした繋がりで出会ったある70代の男性に『翔太君は何を乗っているんですか?』と聞かれたので、最近ジャガーのEタイプを購入したことを話したんです。そしたら、その方が『あれ……。それ、どこで買いました? 中にこういう機材が付いていて、ここに丸いの付いているでしょ?』と細かい仕様を聞いてきました。そう、僕が買ったEタイプは、その方が過去に乗っていたもので、話しているうちに判明したのですが、その方はいつか広尾で見た、あのおじ様だったんです。そんなストーリーがある車なので、もう売ることはないんだろうけれど、もし売るのであれば、僕の頭が白髪混じりになった頃、当時の僕のような青年に譲りたい」。

「僕が持つものって、この車や服のように綺麗なものや未来っぽいものも好きですが、フォードのラプターやヴィンセント・ギャロの作品のような粗野なものも好き。それは東京と雪山を行き来している生活とも通じると思っています。それに加えて、知り合いが作っていたり、もらったりと人との繋がりを感じられるもの。そういったものたちを正しい場所で、正しく使う。そして、その使い方を知っている、というのが僕が大切にしたいスタイルなんです」。

Photo Kei SakakuraStyling Akira Maruyama
Hair & Make-up Kikuchi
Edit Takuya Chiba
Takayasu Yamada
Rikako Goto

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